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2008年6月20日 (金)

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による処遇事件

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妄想型統合失調症による幻覚妄想状態の中で幻聴,妄想等に基づいて行った行為が「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」2条2項の対象行為に該当するかどうかの判断は,対象者が幻聴,妄想等により認識した内容に基づいて行うべきでなく,対象者の行為を当時の状況下で外形的,客観的に考察し,心神喪失の状態にない者が同じ行為を行ったとすれば,主観的要素を含め,対象行為を犯したと評価できる行為かどうかの観点から行うべきである。

付添人が、「原審において,対象者の幻覚妄想状態の中での認識に基づき,①対象者が,本件各物品の所有者である亡くなった者と霊界で会話をして,同人から本件各物品を持ち出すことについて明確な承諾が得られたと認識していたのであるから,対象者には窃盗の故意がなく,②対象者が,B及びCが対象者を殺そうとするやくざであると認識し,B及びCの行為が逮捕行為であるとは考えていなかったのであるから,対象者には逮捕を免れる目的がなく,③対象者が,B及びCから自己に対する急迫不正の侵害があると誤認し,自己の身を守るために両名に暴行を加えたのであるから,対象者の暴行行為は誤想防衛に該当するとして,対象者には事後強盗が成立せず,対象行為が存在しない」と主張した事案。

最高裁は、「医療観察法は,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し,継続的かつ適切な医療等を行うことによって,その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り,もってその社会復帰を促進することを目的とするものである。このような医療観察法の趣旨にかんがみると,対象者の行為が対象行為に該当するかどうかの判断は,対象者が妄想型統合失調症による幻覚妄想状態の中で幻聴,妄想等に基づいて行為を行った本件のような場合,対象者が幻聴,妄想等により認識した内容に基づいて行うべきでなく,対象者の行為を当時の状況の下で外形的,客観的に考察し,心神喪失の状態にない者が同じ行為を行ったとすれば,主観的要素を含め,対象行為を犯したと評価することができる行為であると認められるかどうかの観点から行うべきであり,これが肯定されるときは,対象者は対象行為を行ったと認定することができると解するのが相当である。なぜなら,上記のような幻聴,妄想等により対象者が認識した内容に基づいて対象行為の該当性を判断するとすれば,医療観察法による医療が最も必要とされる症状の重い者の行為が,主観的要素の点で対象行為該当性を欠くこととなりかねず,医療観察法の目的に反することとなるからである」とし、この主張を排斥した原決定を維持した。

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